鳥や哺乳類に研究が集まる 約140万本の論文が映した知識の空白
分類バイアス(ぶんるいバイアス)
生き物の種類によって、研究の数がかたよること。
脊椎動物(せきついどうぶつ)
背骨のある動物のグループ。
無脊椎動物(むせきついどうぶつ)
背骨のない動物のグループ。
生き物の研究は、地球上の命を均等に見ているわけではない。オーストラリアのニューサウスウェールズ大学(UNSW)の研究者は、研究対象の選ばれ方に長く続く偏りを見つけた。これは特定の動物が悪いという話ではない。何を調べるかの選択が、科学が知る世界の形を変えるという話だ。
何が起きたか
研究チームは二つの研究を発表した。ひとつは612誌の1,383,803本の論文を調べた分析。もうひとつは、動物行動を研究する868人へのオンライン調査だ。生き物の種類ごとに研究の数が偏る「分類バイアス」を、論文の数と研究者の選び方の両面から調べた。
背骨のある脊椎動物は動物種の約5%なのに、研究論文では半分より多くを占めた。海と淡水の生物学では、魚の論文の割合も2001年の35.8%から2025年の49.7%へ増えた。その間、水中の無脊椎動物の研究割合は押し下げられた。UNSWの解説
背景にある選び方
動物の大部分は、虫、クモ、ミミズ、ナメクジなどの無脊椎動物だ。研究対象を決めるとき、調べやすさや社会的な役立ちだけでなく、研究者の感情や経験も関わる。調査では、鳥や哺乳類は好意的に見られ、クモなどのクモ類は低く評価された。以前から扱ってきた動物は、道具や知識がそろい、次の研究にも選びやすい。ニュースや交流サイトで注目される動物が、さらに目立つ循環も起きる。研究者調査
なぜ重要か
論文の偏りは、知識の偏りにもつながる。脊椎動物の研究は、より影響力の高い雑誌に載りやすく、引用やメディアの注目も多かった。逆に、研究の少ない生き物は、役割や減少の実態が見えにくい。多くの昆虫はまだ名前さえ付いておらず、絶滅しても気づけないおそれがある。
しかも、人気のない生き物からも発見は生まれる。トカゲの唾液の研究は減量薬につながり、光るクラゲのたんぱく質は細胞研究を変えた。研究対象を見た目の人気だけで決めると、将来の発見の入口を狭めるかもしれない。
確認できたこと
今回、確かめられたのは、科学者が全員、かわいい動物だけを選ぶということではない。大規模な論文分析では、この偏りは2000年代初めから改善していなかった。分野によっては、魚などへの集中が強まっていた。
研究者調査では、実際に扱った動物群への好感が高まり、鳥や哺乳類への好意と研究の集中が重なった。社会のイメージ、研究環境、先輩とのつながりなどが重なっている、と読むのが適切だ。論文概要
まだ分からないこと
動物の種類の割合と、研究費の割合を同じにすべきだと決まったわけではない。研究目的によって、特定の動物を急いで調べる場合もある。また、868人の調査は動物行動研究者を対象にしたものだ。感情が各研究の直接の原因になったか、見落とした発見がどれほどあるかも、まだ測れていない。
次に見る点
大学や政府が、未研究の種や見過ごされた動物群に資金を回せるかが次の焦点だ。まず名前と暮らしを記録する研究も重要になる。研究対象の幅が広がれば、科学は「目立つ命」だけでなく、地球全体に近い姿を説明できるかもしれない。
研究は「好きな動物」に集まりやすい?
📰 しっかり版: 鳥や哺乳類に研究が集まる 約140万本の論文が映した知識の空白
科学者が調べる生き物には、思ったより大きな偏りがあります。
脊椎動物(せきついどうぶつ)
背骨のある動物のグループ。
無脊椎動物(むせきついどうぶつ)
背骨のない動物のグループ。
たんぱく質(たんぱくしつ)
体の中で、いろいろな働きをする成分。
💡 ようするに
- 背骨のある動物に、研究が集まっています。
- 動物の多くは、虫やクモなどです。
- 好き嫌いが、研究の空白を作るかもしれません。
オーストラリアのニューサウスウェールズ大学が調べました。UNSWは、オーストラリアの大学です。ひとつの研究は、612誌の約140万本の論文を調べました。もうひとつは、868人の動物行動研究者に質問しました。
背骨のある動物を脊椎動物と呼びます。脊椎動物は、動物の種類全体の約5%です。それなのに、研究論文の半分より多くが脊椎動物を扱っていました。海や川の研究では、魚の論文の割合が2001年の35.8%から、2025年の49.7%に増えました。
背骨のない動物を無脊椎動物と呼びます。虫、クモ、貝、サンゴなどです。種類は多いのに、研究は少なめです。研究者は、調べやすさだけでなく、好きかどうかにも影響されます。鳥や哺乳類は好まれやすく、クモなどは低く見られやすい傾向がありました。
これは、鳥や魚の研究が悪いという意味ではありません。ただ、研究が少ない生き物は、暮らしや減少の様子が分かりにくくなります。名前さえ付いていない昆虫も多く、絶滅してから気づくおそれがあります。
反対に、トカゲの唾液や光るクラゲのたんぱく質から、人の薬や細胞研究に役立つ発見も生まれました。目立たない生き物にも、まだ知らない力があるかもしれません。
大学や政府が、研究の少ない生き物も支えることが大切です。かわいい動物だけでなく、苦手な動物にも目を向けると、地球のことをもっと正しく知れるかもしれません。
出典:UNSWの解説
どの生き物を、しらべるの?
📰 しっかり版: 鳥や哺乳類に研究が集まる 約140万本の論文が映した知識の空白
科学者は、すきな生き物を選ぶことがあります。
UNSW(ユー・エヌ・エス・ダブリュー)
オーストラリアにある大学の短い名前。
小さなおはなし
科学者は、自然のなぞを調べる人です。ニューサウスウェールズ大学は、オーストラリアの大学です。その短い名前は、UNSWです。UNSWの人たちは、たくさんの科学の紙を読みました。
鳥や魚や大きな動物の話は、たくさんありました。虫やクモや貝の話は、少なめでした。背骨のある動物は、動物全体のほんの少しです。それでも、その動物の話は半分より多くありました。
調べる人に、どの動物が好きかも聞きました。鳥や毛のある動物は、好かれやすかったです。クモは、あまり好かれませんでした。知っている動物は、もっと好きになることもありました。
でも、鳥が悪いわけではありません。虫やクモも、森や水の場所で大切な仕事をします。まだ知らない力を持っているかもしれません。だから、いろいろな生き物を調べることが大切です。
そうすると、地球のおはなしを、もっとたくさん知れます。
大人向けの出典:UNSWの解説