細胞の場所を残したまま、遠くのDNAのつながりを見る「SpaceA」
SpaceA
細胞の位置を残したまま、DNAの遠い部分どうしのつながりを調べる方法。
クロマチン
DNAとたんぱく質がまとまったもの。
A/B区画
DNAの折りたたみ方を分けて表す区分。
何が起きたか
中国科学院(中国の研究機関)の李向教授が率いるチームは、組織の中で細胞があった場所を保ったまま、DNAの遠く離れた部分どうしの接触を調べる方法「SpaceA」を開発した。DNAはたんぱく質とまとまってクロマチンになり、細胞の核の中で複雑な立体構造に折りたたまれている。新しい方法は、その折り方を組織の位置情報と一緒に調べる。
どうやって調べたか
SpaceAは二つの技術を組み合わせる。一つは、微小な流路を使って、組織の場所ごとに分子の目印を付ける空間バーコードだ。もう一つは、DNA断片を物理的につなげず、クロマチンの接触を検出する方法である。これにより、どの領域どうしが関わるかだけでなく、その関わりが組織のどこで起きたかも追える。
研究チームは、マウス胚の組織切片9枚を、胚発生の4段階で調べた。対象は発生11.5日から14.5日までで、解析には約4テラバイトのデータを使った。単一細胞の3Dゲノム法では細胞の位置が失われやすく、従来の空間的な方法は10メガ塩基程度までの近い接触を見つけるのが中心だった。SpaceAは、より遠い接触も扱えるようにした。
何が見えたか
DNAの折りたたみを分けて表すA/B区画は、発生12.5日から13.5日にかけて大きく変化した。この時期には、細胞の遺伝子活動を示す情報にも大きな変化が重なった。
胚の肝臓では、一般的なA/B区画の切り替えとは別の組み立て方が見つかった。10〜40メガ塩基の中距離の接触は増え、隣り合う区画どうしの接触は強まった。一方、異なる染色体にまたがる40メガ塩基超の遠距離接触は弱まった。顕微鏡では、ヘテロクロマチンが付着する様子も見え、遺伝子活動全体の低下を伴っていた。
なぜ重要か
DNAの立体構造は、細胞の働きと関わると考えられている。しかし、組織の中では、同じDNAでも細胞の場所によって状態が違う可能性がある。細胞の位置を消さずに遠い接触まで見られれば、DNAの構造と発生中の組織の変化を同じ地図で比べられる。今回の結果は、DNAの折り方がいつも同じ規則で変わるとは限らないことも示した。
ここまで確認できたこと
確認されたのは、SpaceAが9枚のマウス胚組織切片で、場所を保った3Dゲノム情報を集め、発生段階ごとの違いを捉えたことだ。肝臓で見つかった接触の変化と遺伝子活動の低下は、同じ試料で観察された。ただし、接触の変化が遺伝子活動の低下を直接起こしたと証明したわけではない。
まだ分からないことと次に見る点
人の組織や成長後の細胞でも同じ構造が現れるのかは分かっていない。別の臓器や病気の組織で、どの遺伝子がどの接触と結びつくのかも未解明だ。今後は、より多くの発生段階や組織でSpaceAを試し、観察された接触が細胞の変化を生む仕組みを確かめる必要がある。
細胞の場所を残して、DNAの折り方を調べる方法
📰 しっかり版: 細胞の場所を残したまま、遠くのDNAのつながりを見る「SpaceA」
DNAの折り方と細胞の場所を、同時に調べる新しい方法ができました。マウスの胚の肝臓で、特別な折り方も見つかりました。
SpaceA
細胞の場所を残してDNAを調べる方法。
クロマチン
DNAとたんぱく質のまとまり。
胚
生まれる前の成長中の体。
💡 ようするに
- DNAは長いので、細胞の中で折りたたまれています。
- SpaceAは、折り方と細胞の場所を一緒に調べます。
- マウスの胚の肝臓で、特別な折り方が見つかりました。
中国科学院(中国の研究機関)の李向教授のチームが、SpaceAを作りました。SpaceAは、細胞の場所を残してDNAを調べる方法です。
DNAとたんぱく質のまとまりは、クロマチンと呼ばれます。クロマチンは、細胞の中で立体的に折りたたまれています。DNAの遠い部分どうしが、どの場所で関わるかを知ることが大切です。
これまでの方法には弱点がありました。細胞を一つずつ調べると、組織の中の場所が分からなくなりやすいのです。場所を残す方法でも、近いDNAの関わりしか見にくいことがありました。
研究チームは、マウスの胚の組織切片9枚を調べました。調べた時期は、発生11.5日から14.5日までです。DNAの折り方を表すA/B区画は、発生12.5日から13.5日に大きく変わりました。同じ時期に、細胞の遺伝子活動を示す情報も変わりました。
肝臓では、別の折り方が見つかりました。中くらいの距離にあるDNAの関わりは増えました。とても遠い場所どうしの関わりは弱まりました。これは、DNAの折り方が一つの規則だけで決まらないことを示します。
ただし、変化の原因までは分かっていません。人の細胞でも同じかも未確認です。今後は、別の臓器や発生段階を調べます。どのDNAの関わりが細胞の変化と結びつくかも調べる必要があります。
DNAの折り方を見てみた
📰 しっかり版: 細胞の場所を残したまま、遠くのDNAのつながりを見る「SpaceA」
細胞の中のDNAが、どう折られるかを調べた話です。
DNA
体の作り方を知らせる小さな設計図。
SpaceA
DNAの折り方を見る方法。
胚
生まれる前の小さな体。
体の細胞には、DNAがあります。 DNAは、体の作り方を書いた紙のようなものです。 紙はとても長いので、細胞の中で折られています。
研究チームは、SpaceAという調べ方を作りました。 SpaceAは、DNAの折り方を見る方法です。 細胞があった場所も残します。
研究者は、マウスの胚を調べました。 胚は、生まれる前の体です。 肝臓の細胞では、折り方が少し違いました。 遠いDNAの場所どうしが、関わる様子も見えました。
でも、人の細胞も同じかは分かりません。 これから、別の細胞も調べます。